大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

水戸地方裁判所 平成9年(ワ)466号 判決 1999年10月28日

主文

一  原告が被告に賃貸している別紙物件目録記載の土地の賃料は、平成九年五月二四日以降月額五一万五六二五円であることを確認する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その一を原告の、その余を被告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

原告が被告に賃貸している別紙物件目録記載の土地の賃料は、平成九年五月二四日以降月額五六万七一八七円であることを確認する。

第二  事案の概要

本件は、原告が被告に賃貸している別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の平成九年五月二四日以降の相当賃料額の確定を求める事案である。

一  争いのない事実

1  原告の母呼野三美は、被告に対し、昭和五二年七月六日、本件土地を左の条件で賃貸した。

(一) 目的 バッティングセンター営業用建物所有の目的

(二) 賃貸借期間 昭和五二年七月一〇日から二〇年間

(三) 賃料 月額一二万円。毎月末日限り翌月分を支払う。

(四) 特約 賃料の増額は、二年毎に協議の上、これを更新する。

2  呼野三美は、被告との間で、昭和六二年八月、従前の賃料月額二三万円を月額二九万円に増額することを合意した。

3  原告は、平成四年五月八日、呼野三美から本件土地の賃貸人の地位を譲渡され賃貸人となった。

4  原告は、被告に対し、平成九年五月二四日到達の内容証明郵便により、本件土地の賃料を同日以降月額五六万七一八七円に増額する旨の意思表示をした。

二  争点

賃料増額請求時点における賃料増額事由の存否と相当賃料額

第三  争点に対する判断

一  賃料増額事由について

前記争いのない事実によれば、昭和六二年八月に従前賃料が定められてから平成九年五月の増額請求まで一〇年弱経過しているが、証拠(甲四ないし一三号証)によれば、右期間中、地価及び公租公課は上昇を続けていることが推認できるから、従前の賃料は不相当に低額となるに至っていると解するのが相当であり、本件増額請求は借地借家法一一条一項所定の賃料増額の要件を具備しているといえる。

二  相当賃料額について

鑑定の結果によれば、鑑定人は、本件土地及びその付近の状況を分析して、本案件に即応する鑑定評価方式として賃貸事例比較法及び積算法を適用したこと、平成九年五月時点における本件土地の試算賃料として、賃貸事例比較法による比準賃料をM2当たり月額二三五円、積算法による積算賃料をM2当たり月額三五五円と算出したうえ、長期的景況低迷の経済的環境、特に企業城下町における親企業の業績不振の影響等を勘案し、比準賃料の信頼性をやや重視し積算賃料を参考として、平成九年五月一日時点における本件土地の適正賃料を月額五一万五六二五円(M2当たり月額二七五円)と算定したことが認められ、鑑定書の記載内容に照らすと右鑑定の結果は信頼できる。

これに対し、被告は、別紙平成一一年七月二九日準備書面に記載のとおり、右鑑定の結果の不当性を主張するが、右主張はにわかに採用し難い。

以上によれば、本件土地の賃料は、平成九年五月二四日以降月額五一万五六二五円に増額されたものというべきである。

三  よって、本件請求は、本件土地の賃料が平成九年五月二四日以降月額五一万五六二五円であることの確認を求める限度において正当であるから認容し、その余は失当であるから棄却する。

別紙 物件目録、準備書面<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例